「布団に入っても眠れない」「夜中に何度も目が覚める」「しっかり寝たはずなのに日中ずっと眠い」。
眠りの悩みは身近なものなので、「疲れているだけかな」とそのままにしてしまいがちです。けれど、その悩みの背景には、睡眠障害と呼ばれる病気が隠れていることもあります。
睡眠障害には、眠れない病気だけでなく、眠りすぎてしまう病気、眠っているあいだの呼吸や体の動きに問題が出る病気など、さまざまな種類があります。
この記事では、次のことを公的機関や学会の情報をもとに整理します。
- 睡眠障害とは何か、生活習慣による眠りの不調との違い
- 睡眠障害の種類一覧(7つのグループと主な病気の名前)
- それぞれの主な症状と原因
- 子供・女性・高齢者に多い睡眠障害と、ストレスやうつ病との関係
- 病院に行く目安、何科を受診するか、診断の流れ
なお、この記事は睡眠障害についての一般的な情報をまとめたものです。睡眠障害かどうか、どの種類にあたるかは自分では判断できず、診断は医師が行います。受診の目安は、後半の「睡眠障害のチェックと病院に行く目安」で紹介しています。
眠れない理由が、仕事や人間関係などの悩みにあると感じている方もいるかもしれません。頭の中で同じことをぐるぐる考えてしまう夜は、誰かに話して気持ちを整理することが助けになることもあります。
睡眠障害とは?眠りの悩みとの違い

まずは、睡眠障害とはどんなものなのか、ふだんの眠りの不調とどう違うのかを確認しておきましょう。
睡眠障害は眠りにかかわる病気の総称
睡眠障害とは、眠りに関するさまざまな病気をまとめた呼び方です。日本睡眠学会によると、睡眠にかかわる病気は60種類以上に分類されています。
「眠れない」という悩みだけが睡眠障害ではありません。次のように、あらわれ方はさまざまです。
- 眠る時間が短くなる、または長くなりすぎる
- いびきや呼吸の停止、歯ぎしりなどで眠りが妨げられる
- 寝ぼけて歩き回る、大声を出すなど、眠っているあいだに異常な行動が出る
- 夜の眠りの問題が原因で、日中に強い眠気や疲れ、集中力の低下が出る
生活習慣による眠りの不調との違い
眠れない、眠っても休めた感じがしない、日中に眠いといった悩みは、睡眠障害だけで起こるわけではありません。
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、こうした症状には「睡眠環境・生活習慣・嗜好品」が原因のものと、「睡眠障害」が原因のものがあると整理されています。
- 睡眠環境・生活習慣・嗜好品が原因の場合:寝室の明るさや温度、夜ふかし、寝る前のスマホ、カフェインやお酒のとり方などを見直すことで、よくなることがある
- 睡眠障害が原因の場合:生活を見直すだけでは症状がよくならないことがある
生活習慣を整えても眠りの悩みが続き、日中の生活に影響が出ているときは、睡眠障害が隠れている可能性があるため、早めに医師に相談することがすすめられています。
睡眠の悩みを抱える人の割合
眠りの悩みは、決してめずらしいものではありません。
国立精神・神経医療研究センター(NCNP)の「こころの情報サイト」によると、不眠の悩みを持つ人は3人に1人、不眠症の人は10人に1人ほどといわれています。寝つけない、途中で目が覚めるといった不眠症状を一時的に経験する人は3〜5割ほどいて、加齢とともに増え、女性にやや多い傾向があります。
参考:国立精神・神経医療研究センター こころの情報サイト「不眠症(睡眠障害)」
また、厚生労働省のe-ヘルスネットでは、令和元年の国民健康・栄養調査で、過去1か月に週3回以上日中の眠気を感じた人が34.8%いたことが紹介されています。
睡眠障害の種類一覧 7つのグループと主な病気の名前
睡眠障害の診断に国際的に使われている「睡眠障害国際分類 第3版(ICSD-3)」では、睡眠障害を大きく7つのグループに分けています。それぞれのグループと、代表的な病気の名前は次のとおりです。
- 不眠症:寝つけない、途中で目が覚める、朝早く目が覚めるなどで、日中の生活に支障が出る(慢性不眠障害、短期不眠障害など)
- 睡眠関連呼吸障害:眠っているあいだの呼吸に問題が出る(閉塞性睡眠時無呼吸、中枢性睡眠時無呼吸など)
- 中枢性過眠症:夜に眠っていても日中に強い眠気が続く(ナルコレプシー、特発性過眠症、睡眠不足症候群など)
- 概日リズム睡眠・覚醒障害:体内時計がずれて、望ましい時刻に寝起きできない(睡眠・覚醒相後退障害、睡眠・覚醒相前進障害、交代勤務障害、時差障害など)
- 睡眠時随伴症:眠っているあいだに異常な行動や体験が起こる(夜驚症、睡眠時遊行症、悪夢障害、レム睡眠行動障害など)
- 睡眠関連運動障害:脚の不快感や手足の動きで眠りが妨げられる(睡眠関連歯ぎしり、むずむず脚症候群、周期性四肢運動障害など)
- その他の睡眠障害:上のどれにもあてはまらないもの
参考:Sateia MJ(2014年、Chest誌)睡眠障害国際分類 第3版の改訂点を解説した論文
ここからは、日常の悩みとして相談されることが多い睡眠障害の種類を、グループごとに紹介します。
不眠症 寝つけない・途中で目が覚める

不眠症は、睡眠障害の中でもっとも身近な病気です。
不眠症の主な症状
不眠症は、眠る環境が整っていて眠る時間も確保しているのに、うまく眠れない状態が続き、日中の生活に支障が出る病気です。夜にみられる代表的な症状は次の3つです。
- 入眠困難:寝床に入っても、眠りにつくまでに時間がかかる
- 中途覚醒:夜中に何度も目が覚める
- 早朝覚醒:朝早く目が覚めて、その後眠れない
このほか、眠ってもぐっすり眠った感じがしない(熟眠感がない)と感じる人もいます。不眠が続くと、朝起きたときの「休めた」という感覚が薄れ、だるさや気分の落ち込み、仕事の効率の低下など、日中の困りごとが増えていきます。
不眠症の原因
不眠のきっかけはさまざまですが、NCNPのこころの情報サイトによると、不眠症状の多くはストレスにともなってあらわれるとされています。主なきっかけには、次のようなものがあります。
- 悩みやストレス、緊張などの心の負担
- 騒音や明るさ、暑さ寒さ、寝る場所が変わるなどの環境の変化
- 寝る前のカフェインやたばこ、寝酒
- 寝不足を取り戻そうとして長く寝床にいること、日中に体を動かさないこと
- 加齢による眠りの変化
- 体の病気による痛みやかゆみ、心の病気、薬の影響
眠れないこと自体が不安になり、「眠らなきゃ」と力むほど目がさえてしまうという悪循環も、不眠を長引かせる原因になります。
一時的な不眠と不眠症の違い
強いストレスがかかる出来事があると、多くの人が数日から数週間、眠れない時期を経験します。これは誰にでも起こりうる一時的な不眠です。
NCNPのこころの情報サイトでは、週3日以上の不眠が3ヶ月以上にわたって続くときは、治療の対象となる不眠症のことがあるとされています。夜の不眠症状に加えて、日中の不調が出ているかどうかもポイントになります。
過眠症 夜眠っても日中に強い眠気が続く

過眠症は、睡眠不足や眠りを妨げるほかの病気がないのに、日中に強い眠気があらわれる病気です。「寝すぎてしまう」「どれだけ寝ても眠い」という悩みの背景にあることがあります。代表的なものに、ナルコレプシーと特発性過眠症があります。
ナルコレプシー
NCNPの解説によると、ナルコレプシーは多くが思春期に発症し、食事中や歩いているときなど、ふつうは眠らない場面でもがまんできない眠気におそわれるのが特徴です。居眠りは数分から十数分ほどと短く、目覚めるとすっきりした感じがあります。
大笑いや驚き、怒りなど強い感情がきっかけで体の力が抜ける「情動脱力発作」や、寝入りばなや目覚めのときに体が動かせなくなる(いわゆる金縛り)、人や動物がいるように感じるといった症状をともなうこともあります。
特発性過眠症
特発性過眠症も、日中の強い眠気と居眠りが続く病気です。ナルコレプシーと比べて居眠りが1時間以上と長く、起きてもすっきりしにくいのが特徴とされています。夜の睡眠が10時間以上と長くなるタイプもあり、朝起きるのがとてもつらくなることがあります。
参考:国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所「中枢性過眠症」
睡眠不足症候群との違い
日中の眠気は、慢性的な睡眠不足によっても起こります。これを睡眠不足症候群といいます。
必要な睡眠時間には個人差があるため、長い睡眠が必要な体質の人は、毎日6〜8時間ほど寝ていても睡眠不足症候群になることがあります。平日は短く、週末に寝だめをするパターンが多く、寝だめで眠気が一時的に和らいでも、睡眠不足の悪影響は解消されないとされています。
まずは十分な睡眠時間を確保してみて、それでも日中の強い眠気が続く場合は、過眠症などの可能性もあります。
睡眠時無呼吸症候群 いびきと呼吸の停止

睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、眠っているあいだに呼吸が止まったり、浅くなったりすることをくり返す病気で、睡眠関連呼吸障害の代表的なものです。多くは、空気の通り道(上気道)がせまくなって起こる「閉塞性睡眠時無呼吸」です。
主な症状と体へのリスク
主な症状は、大きないびき、眠っているあいだの呼吸の停止、日中の強い眠気や居眠り、朝起きたときの疲れなどです。
呼吸が止まるたびに血液中の酸素が足りなくなり、体が目を覚ます反応をくり返すため、深い眠りがとれなくなります。本人は眠っているつもりでも自覚しにくく、家族やパートナーにいびきや呼吸の停止を指摘されて気づくことが多いのが特徴です。
厚生労働省のe-ヘルスネットでは、睡眠時無呼吸症候群が高血圧や動脈硬化を進め、心筋梗塞や脳卒中を起こしやすくすること、眠気による事故の原因にもなることが説明されています。中等症以上の場合は、すぐに治療が必要とされています。
参考:厚生労働省 e-ヘルスネット「睡眠時無呼吸症候群 / SAS」
起こりやすい人
睡眠ガイド2023によると、閉塞性睡眠時無呼吸のいちばんの危険因子は肥満です。ただし、あごが小さい、下あごが後ろに下がっている、首が短いなどの体の特徴が原因になることもあり、太っていないから大丈夫とはいえません。
男性に多いことが知られていますが、女性も閉経後に増えるとされています。
概日リズム睡眠・覚醒障害 体内時計のずれ

概日リズム睡眠・覚醒障害(以前は「概日リズム睡眠障害」とも呼ばれていました)は、体内時計のリズムが、昼と夜のサイクルや社会生活の時間とずれてしまい、望ましい時刻に寝起きできなくなる病気です。
睡眠・覚醒相後退障害
極端な遅寝・遅起きが特徴で、思春期や若い世代に多くみられます。夜になってもなかなか眠れず、朝決まった時刻に起きられないため、学校や仕事に遅刻してしまうなど、社会生活に支障が出ます。無理に起きても強い眠気やだるさが残ることがあります。
睡眠・覚醒相前進障害
極端な早寝早起きが特徴で、高齢の方に多くみられます。夕方から夜の早い時間に眠くなり、深夜から早朝に目が覚めてしまうため、家族と生活リズムが合わなくなることに悩む人もいます。
どちらも、寝つけない、朝早く目が覚めるといった症状が出るため、不眠症と見分けにくいことがあります。
交代勤務や時差によるもの
日勤と夜勤をくり返す交代勤務や、海外への移動による時差でも、体内時計がずれて眠りが乱れることがあります。仕事の働き方が睡眠に影響しているときは、職場の産業医に相談してみましょう。
睡眠時随伴症 寝ぼけや悪夢などの異常行動

睡眠時随伴症(パラソムニア)は、眠っているあいだに、本人が望まない行動や体験が起こる睡眠障害です。どの眠りの段階で起こるかによって、大きく2つに分けられます。
ノンレム睡眠で起こるもの
深いノンレム睡眠から中途半端に目覚めた状態で起こると考えられているものです。
- 夜驚症:眠っている最中に突然叫んだり泣き出したりする
- 睡眠時遊行症:寝床から出て歩き回る(いわゆる夢遊病)
- 睡眠関連摂食障害:寝ぼけた状態で食べ物を口にする
比較的若い年代に多く、起こしにくいうえ、翌朝本人は覚えていないことがほとんどです。
レム睡眠で起こるもの
夢を見ることが多いレム睡眠のときに起こるものです。
- 悪夢障害:悪夢をくり返し見て眠りが妨げられ、日常生活に支障が出る。子どもに多く、成長とともに消えることが多い一方、大人ではPTSDやうつ病にともなってあらわれることもある(PTSDについてはトラウマ(PTSD)の症状と原因で紹介しています)
- レム睡眠行動障害:夢の内容に合わせて大声を出したり、手足を激しく動かしたりする。50歳以降の男性に多く、パーキンソン病などの神経の病気にともなってあらわれることもある
ベッドから落ちたり、隣で寝ている人がけがをしたりすることもあるため、こうした行動を指摘されたときは、後半の受診の目安も参考にしてください。
むずむず脚症候群と周期性四肢運動障害
眠りの前後や眠っているあいだの、体の感覚や動きによって眠りが妨げられる睡眠関連運動障害の代表が、むずむず脚症候群と周期性四肢運動障害です。2つはしばしば一緒にみられます。
むずむず脚症候群

夕方から夜にかけて、じっとしているときに脚などに「むずむず」「ざわざわ」「虫がはうような」不快な感覚があらわれ、動かさずにいられなくなる病気を、むずむず脚症候群(別名レストレスレッグス症候群)といいます。
脚を動かすと楽になりますが、止めるとまた症状が出るため、眠いのに寝つけないという悩みにつながります。入眠困難タイプの不眠症とまちがえられることもあります。原因として鉄不足などが指摘されており、妊娠中にも起こりやすくなるとされています。
周期性四肢運動障害

眠っているあいだに脚などの筋肉がピクッと動くことがくり返され、眠りが細切れになってしまう病気を、周期性四肢運動障害といいます。本人は気づかないことが多く、夜中に目が覚める、日中にだるさや眠気が続くといった形であらわれます。
睡眠ガイド2023では、カフェインやアルコール、ニコチンがむずむず脚症候群を悪化させる可能性があるため、できるだけ控えるようすすめられています。
子供・女性・高齢者に多い睡眠障害
睡眠障害の起こりやすさは、年代や性別によっても変わります。
子供の睡眠障害
厚生労働省のe-ヘルスネットによると、子どもの4〜5人に1人に、睡眠不足や朝起きられない、日中の眠気などの何らかの睡眠の問題があるとされています。子どもにみられる睡眠障害としては、閉塞性睡眠時無呼吸、夜驚症や睡眠時遊行症、睡眠・覚醒相後退障害、むずむず脚症候群などがあります。朝起きられない子どもの体の病気については、起立性調節障害の症状と何科に行くかでも解説しています。
眠っているあいだに呼吸が止まる、眠りが浅い、寝入りばなや夜中に異常な動きがある、日中の眠気が強いといった症状が1か月以上続くときは、小児科に相談するようすすめられています。
女性の睡眠障害(月経・妊娠・産後・更年期)
女性は、女性ホルモンの変化によって、ライフステージごとに睡眠の悩みが変わります。
- 月経前:眠気が強くなったり、眠りが浅くなったりしやすい
- 妊娠中:頻尿や体の痛みなどで眠りにくくなり、むずむず脚症候群や閉塞性睡眠時無呼吸も起こりやすくなる
- 産後:授乳や夜泣きで眠りが細切れになる。産後うつは10〜20%ほどが経験するとされ、睡眠不足や不眠が強いとリスクが高まる
- 更年期:ほてりや発汗などで深く眠れなくなり、不眠や閉塞性睡眠時無呼吸にもかかりやすくなる
更年期の気分の落ち込みやイライラについては、更年期のメンタル不調の原因と対策でも紹介しています。
高齢者の睡眠障害
年齢を重ねると、必要な睡眠時間が短くなり、夜の眠りが浅くなって昼間に眠くなりやすくなります。そのため、不眠の悩みは加齢とともに増える傾向があります。
高齢者では、不眠症のほか、睡眠・覚醒相前進障害、閉塞性睡眠時無呼吸、レム睡眠行動障害などにも注意が必要です。必要以上に長く寝床にいると、かえって眠りが浅くなるため、睡眠ガイド2023では、寝床にいる時間が8時間以上にならないことを目安にするようすすめられています。
ここまで読んで、「自分の眠れなさは、病気というより心の疲れから来ている気がする」と感じた方もいるのではないでしょうか。眠れない夜に浮かぶ不安や考えごとは、話して言葉にすることで少し落ち着くことがあります。
心の悩みで眠れない夜が続いているなら、公認心理師に気持ちを話してみませんか。
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睡眠障害とストレス・うつ病の関係
睡眠と心の健康は、深くつながっています。
ストレスや仕事の悩みと不眠
仕事のプレッシャーや人間関係の悩み、将来への不安などのストレスがかかると、体が緊張した状態のままになり、寝つきが悪くなったり、夜中に目が覚めたりしやすくなります。ストレスがたまっているときのサインは、仕事でストレスが溜まる原因とサインで確かめられます。
睡眠ガイド2023では、仕事などによる日中のストレスが、眠って休めた感覚(睡眠休養感)を下げる要因として挙げられています。また、退勤から次の出勤までの休息時間が12時間未満の働く人は、睡眠休養感の欠如や疲れ、ストレスを強く感じているという調査結果も紹介されています。
仕事の悩みで眠れない方は、仕事の不安とストレスで眠れない方への記事も参考にしてください。
うつ病などの心の病気と睡眠
睡眠ガイド2023では、うつ病などの心の病気では、発症の早い段階から睡眠の問題があらわれること、睡眠の問題そのものが心の病気の発症リスクを高めるという報告があることが紹介されています。
また、不眠症はうつ病や不安症などの初期症状として、あるいは一緒にあらわれることが多いとされています。この場合、眠りだけに目を向けた対処ではよくなりにくいため、医師に相談することがすすめられています。
眠れないことに加えて、気分の落ち込み、何をしても楽しめない、食欲がないといった状態が続くときは、一人で抱え込まないことが大切です。
睡眠障害のチェックと病院に行く目安
自分の眠りの悩みが睡眠障害にあたるかどうかは、医師の診察で確かめる必要があります。ここでは、受診を考えるときの目安を紹介します。
当てはまる症状をチェック
NCNPの保健師・対人援助職向けのマニュアルで紹介されている確認項目をもとに、医療機関への相談を考えたいサインをまとめました。当てはまるものがあっても診断にはなりませんが、相談するときの目安にしてください。
- 眠っているあいだに息が止まっている、大きないびきがあると言われる
- 夕方から夜に脚がむずむずして動かしたくなる、脚がピクつく
- 十分に寝ても日中の強い眠気がある、突然寝てしまうことがある
- 眠っているあいだに大声を出す、夢と同じように手足を動かすと言われる
- 明け方まで寝つけず、昼過ぎまで起きられない日が続く
- 寝つけない、途中で目が覚める、早く目が覚めるなどで、日中の眠気や疲れが強い
参考:国立精神・神経医療研究センター「睡眠障害・睡眠問題に対する支援マニュアル」
このほか、生活習慣を見直しても眠れない状態が続く、眠気で仕事や家事、学業に支障が出ているといったときも、相談のタイミングです。
睡眠障害は何科を受診する?
睡眠の悩みをどこに相談すればよいか迷ったときは、症状に合わせて次のように考えてみましょう。
- まず相談しやすい場所:かかりつけ医。持病の薬の影響などもあわせて相談できる
- ストレスや気分の落ち込みをともなう不眠:心療内科・精神科
- いびき・呼吸の停止・強い日中の眠気・異常行動など:睡眠外来など、睡眠障害を専門に診る医療機関
- 子どもの睡眠の悩み:小児科
- 月経や更年期にともなう不眠:婦人科・産婦人科
睡眠を専門とする医師や医療機関は、日本睡眠学会の睡眠医療認定一覧で探すことができます。
病院での診断と検査
診察では、いつから・どんなふうに眠れないのか、日中の様子、生活習慣、飲んでいる薬などをくわしく聞かれます。NCNPのマニュアルでは、受診のときに2週間程度の睡眠記録(寝た時刻・起きた時刻、日中の眠気、異常行動の有無など)を持っていくとよいとされています。
睡眠時無呼吸症候群やナルコレプシー、レム睡眠行動障害などが疑われる場合は、脳波や呼吸、体の動きなどを一晩かけて記録する「終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)」が必要になります。
薬による治療の考え方
睡眠障害の治療は、種類によって異なります。不眠症の場合は、まず生活習慣や眠りの習慣を見直すことから始め、それでもよくならないときに睡眠薬などが使われることがあります。
睡眠薬にはいくつかの種類があり、どれを使うかは医師が判断します。NCNPのこころの情報サイトでは、睡眠薬を使うときは主治医の指示に従い、決められた使い方と量を守ることが大切だとされています。自己判断で量を増やしたり、急にやめたりしないようにしましょう。
睡眠障害が気になるときの対処法
受診するまでのあいだや、生活習慣が原因の眠りの不調には、次のような工夫が役立つことがあります。
- 毎朝同じ時刻に起き、カーテンを開けて朝の光を浴びる
- 日中に体を動かし、長い昼寝は避ける
- カフェインは夕方以降控え、寝酒やたばこに頼らない
- 寝る前のスマホを控え、寝室を暗く静かに保つ
- 眠れないときは一度寝床を離れ、眠くなってから戻る
- 寝不足を取り戻そうとして、必要以上に長く寝床にいない
眠りの質を上げる工夫や、睡眠時間の目安については、睡眠のメリットと睡眠の質を上げる方法の記事でくわしく紹介しています。
ただし、睡眠障害が原因の場合は、こうした工夫だけでは改善しないことがあります。いびきや呼吸の停止、強い日中の眠気、異常行動などがあるときは、自分で対処しようとせず、前の章の受診の目安を参考にしてください。
眠れないほどの悩みを話せる相談窓口
眠れない原因が、仕事や家庭、人間関係などの悩みにあるときは、心の負担を軽くすることも大切です。病院以外に、カウンセリングで悩みを話す方法もあります。オンラインカウンセリングなら、公認心理師に自宅から相談できます。くわしくは記事の最後で紹介します。
ストレスの相談先の選び方については、ストレスの相談はどこにするべきかの記事でもくわしく紹介しています。
眠れない日が続くと、「こんなことで相談していいのかな」と迷ってしまうかもしれません。けれど、悩みが小さいうちに話しておくことで、心が軽くなることもあります。
病院に行くほどか迷っている段階でも、まずは話を聞いてもらうところから始めてみませんか。

よくある質問
睡眠障害について、気になる方が多い疑問にお答えします。
Q. 睡眠障害には何種類ありますか?
日本睡眠学会によると、睡眠にかかわる病気は60種類以上に分類されています。国際的な分類(睡眠障害国際分類 第3版)では、不眠症、睡眠関連呼吸障害、中枢性過眠症、概日リズム睡眠・覚醒障害、睡眠時随伴症、睡眠関連運動障害、その他の睡眠障害の7つのグループに分けられています。
Q. 睡眠障害かどうか自分でチェックできますか?
この記事で紹介したようなサインは、医療機関に相談するかどうかの目安になります。ただし、どの睡眠障害にあたるか、そもそも睡眠障害かどうかは、自分では判断できません。気になる症状が続くときは、睡眠記録をつけておくと、相談するときに役立ちます。
Q. 寝すぎてしまうのも睡眠障害ですか?
十分に寝ても日中の強い眠気が続く場合は、過眠症などの睡眠障害の可能性があります。一方で、平日の睡眠不足を休日に取り戻そうとして長く寝てしまうこともあります。まずは平日の睡眠時間を確保してみて、それでも眠気が続くときは、睡眠障害の可能性も考えてみてください。
Q. ストレスで眠れないのは睡眠障害ですか?
強いストレスがあると、多くの人が一時的に眠れなくなります。ストレスが落ち着くとともに眠れるようになることも多いですが、週3日以上の不眠が3ヶ月以上続く、日中の生活に支障が出ているといった場合は、不眠症の可能性があります。気分の落ち込みもあるときは、一人で抱え込まずに相談してください。
Q. スマホを寝る前に見ると睡眠障害になりますか?
寝る前のスマホだけで睡眠障害になるとはいえませんが、画面の光で目がさえて寝つきが悪くなり、眠りの質が下がる原因になります。睡眠ガイド2023では、寝室にスマホやタブレットを持ち込まず、できるだけ暗くして寝ることがすすめられています。
Q. 睡眠薬は飲み続けても大丈夫ですか?
睡眠薬の種類や使う期間は、症状に合わせて医師が判断します。不安なことがあれば主治医に相談し、自己判断で量を変えたり急にやめたりしないようにしましょう。市販の睡眠改善薬を使う場合も、眠れない状態が続くなら、自己判断で使い続けないようにしましょう。
よくある質問を読んで、「病院で相談することと一緒に、心の悩みも整理したい」と感じた方もいるかもしれません。眠りの悩みの裏にある気持ちに目を向けることも、自分を大切にする一歩です。
まとめ
睡眠障害の種類について、ポイントを振り返ります。
- 睡眠障害は眠りにかかわる病気の総称で、60種類以上に分類されている
- 国際的な分類では、不眠症、睡眠関連呼吸障害、中枢性過眠症、概日リズム睡眠・覚醒障害、睡眠時随伴症、睡眠関連運動障害、その他の7つのグループに分けられる
- 不眠症は週3日以上・3ヶ月以上続き、日中に支障が出ている場合に治療が必要なことがある
- いびきや呼吸の停止、強い日中の眠気、眠っているあいだの異常行動、脚の不快感は、睡眠障害のサインのことがある
- 子供・女性・高齢者では、年代やホルモンの変化に応じた睡眠の悩みが起こりやすい
- 睡眠の問題はうつ病などの心の不調と深く関係している
- 診断は医師が行う。自己判断せず、受診の目安を参考にする
眠れない日が続くと、心も体も少しずつすり減っていきます。「このくらいで相談するのは大げさかな」と思わずに、気になることがあれば早めに専門家を頼ってください。
ストレスが限界に近いときのサインについては、精神的ストレスが限界を超えるサインの記事も参考にしてください。
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