トラウマ(PTSD)とは?症状の原因や対処方法までわかりやすく紹介

「心の病なんて私には関係ない!」と思っている方も多いと思います。

身近であるからといって、治すことは容易ではありません。

場合によっては、病気と付き合っていくことも考えなければなりません。

そんなトラウマ(PTSD)という心の病の症状や対処方法をまとめました。

トラウマ(PTSD)とは?簡単にまとめ

トラウマ(PTSD)とは?簡単にまとめ

トラウマとは、元々は英語でtraumaといった言葉で心的外傷後ストレス障害(Posttraumatic Stress Disorder)の略です。

外傷、身体の傷に使われていた言葉でしたが、その後、心の傷にも使われるようになったといった経緯があります。

日本においては一生のうちにトラウマ(PTSD)を発症する方は1.1%~1.6%にのぼるといわれています

20代から30代前半では3.0%~4.1%と発症の割合が高くなっています。

これらのことから、意外と身近な心の病であると考えられます。

参考文献
PTSDの人はどのくらいいるのでしょう?|ブログ|ひだまりこころクリニック (hidamarikokoro.jp)
e-ヘルスネット | PTSD / 心的外傷後ストレス障害
e-ヘルスネット | PTSD

トラウマの症状や診断

PTSDは以下の3つが認められる状態を示します。

  1. 心的外傷の出来事となった再体験、生々しい侵入的な記憶やフラッシュバックや悪夢の形で起こる
    →再体験
  2. 心的外傷になった出来事に関連する思考や記憶の回避。体験を連想させる活動や状況や人々を回避する
    →回避
  3. 現在でも脅威が存在しているような持続的な感覚
    →脅威の感覚

上記の症状をまとめると、過去の辛い体験が脳に影響を与え、日常生活に支障をきたしている状態であるといえます。

さらに、複雑性PTSDといった症状もあります。

これは、先ほどの3つに加えて、さらに下記の3つが認められた状態を示します。

  1. 感情コントロールの問題
  2. 自分はとるにたらない、打ち負かされた、または価値がないという持続的な思い込み
  3. 人間関係を維持することや人と親密であると感じることの困難

複雑性PTSDは心の傷そのものの症状ではなく、心の傷を何度も繰り返していくうちに、その人らしさが失われていく症状と考えられます。

PTSDによる長期的な影響が複雑性PTSDへとつながっていく場合もあります。

早期治療が予後に影響するので、心当たりがある場合は早めに精神科を受診する必要があるでしょう。

引用文献
青木省三(2020)| ぼくらの中の「トラウマ」| いたみを癒すということ | 中央精版印刷会社 

トラウマの例

命を脅かされるような体験、戦争被害、災害、事故、性的被害などの強いストレスがかかったことをきっかけに発症する場合があります。近年では、虐待によるPTSDも増加傾向にあります

  • 夜道を歩いているときに襲われた経験がある人が夜道を歩くことをきっかけに「再体験しているかのように思い出す」と襲われた時の出来事を思い出す。
  • 親からの虐待の体験によって、人間不信に陥ってしまった。
  • 豪雨災害によって土砂災害の被害を受け、「夜に眠ろうとしても土砂が迫ってくる夢を見るから眠れない」と不安に駆られる。

そのような症状はまさしくPTSDの症状の一つである最体験であると考えられます。虐待体験によるPTSDが長い年月をかけて、複雑性PTSDへとつながった例であるといえます。

参考文献
文部科学省 | 第2章 心のケア 各論
児童虐待とPTSD(心的外傷後ストレス障害) | 精神保健福祉士ブログ (nippku.ac.jp)

PTGとは?

PTG(Posttraumatic Growth;心的外傷後成長)は、「トラウマティック」な出来事、すなわち心的外傷をもたらすような非常につらく苦しい出来事をきっかけとした人間としてのこころの成長を指します

人の心の「マイナスの部分を回復させる」といった従来の考え方から「マイナスと考えていた体験をプラスに転じる」といった発想を重視しています。

全ての方に対して「前向きに考えよう!」と言っているわけではありません。

辛い過去をポジティブに捉えるということは非常に難しいことです。

ただ、PTGの考え方は人生にはプラスの面もあるということを考えるきっかけにはなると思います。

今よりも明るい明日を踏み出すために、知っておいて損はない考え方です。

トラウマとは何か?原因から簡単に紹介

トラウマとは何か?原因から簡単に紹介

実は「この体験をしたら確実にトラウマになる!」といったものは存在しません

本人が出来事に対して、どのように感じ、意味づけをしているかで変わってきます。そのため、大きな出来事でもトラウマが小さい時もあります。

一方で、周囲からみたら小さい出来事でも本人からすれば大きなトラウマになっている場合もあります。

大切なのは出来事の程度とトラウマの程度は必ずしも一致するわけではないということです。

ただ、実際にトラウマの発症に関わると考えられている出来事は存在します。

以下の出来事が必ずしもトラウマの原因になるというわけではありません。

しかし、その体験がトラウマの発症につながった方々が多いというのも事実です。

原因①  いじめ

たびたびニュースで報道されているいじめですが、トラウマの原因となりうる出来事です

無視をされたり、遊びに入れてもらえなかったりといった体験は社会とのつながりを絶たれる辛い体験といえるでしょう。

いじめは主に複雑性PTSDへとつながります。

何度も繰り返し自信を打ち砕かれる体験を重ねることで、他者への信頼感そのものが失われてしまうのです。

原因② 児童虐待

児童虐待には殴る蹴るを始めとする身体的虐待、性的虐待、ネグレクト、心理的虐待という4つに分けられます。

親からすればしつけと称して行っていたことが、周囲からすれば虐待であるという場合が多いといわれています。

そのため、虐待を受けていたにも関わらず、「悪いのは私だ…」といった考え方に陥ってしまうパターンがあります

原因③ 性犯罪、性暴力

性犯罪、性暴力は「望まない性的な行為は、性的な暴力にあたる」というのがポイントです

例えば、「カップルであるから性交渉をしたい時にするものだ」という考え方は危険です。

双方の合意がなければ、性犯罪、性暴力とみなされる可能性があります。

性の問題は周囲に言いだせず、表面化しにくい傾向があります。

パートナーが望んでいるからといって、全てを受け入れる必要はないのです。

原因④ 災害

自然が引き起こす災害は人間にはどうすることもできません。

予想が困難な自然災害に巻き込まれた場合、心に与える影響も大きいのです。

世の中を震撼させた新型コロナウイルスのパンデミックも世界中が影響を受けた災害だったのではないでしょうか。災害は決して他人事ではありません。

安心・安全と考えていた日常が災害によって崩された影響は計り知れないものなのだと考えられます

原因⑤ 死別

愛する人、大切な人を失うこともトラウマの原因となりえます。

特に亡くなり方が事故や犯罪など不意なものであったりすると、心に与える影響も大きくなります。

大切な人を突然失うといった体験がトラウマとなり、命日が近づいてくると症状に悩まされる場合もあります。

時間が何とかしてくれる場合もありますが、全てがそうなるわけではありません。

時に、永遠の別れがトラウマとなり、不安や悲しみがぬぐいされない日々を送るようになることもあるのです。

一人で悩み抱えてツラい時は、心の専門家に相談することをおすすめします。
Kimochiでは、臨床心理士・公認心理師の方にオンラインで相談することができます。

トラウマはどんな影響があるのか?

トラウマはどんな影響があるのか?

トラウマ(PTSD)とは、原因は何かを紹介しました。

では、トラウマにはどういった影響があるのかを解説していきます。

  • 人や世界が信じられなくなる
  • 身体が警戒状態になる
  • 感情や行動が不安定になる
  • 心が解離する

人や世界が信じられなくなる

今までの日常が崩されるようなショッキングな体験をすると、安心安全の基盤が崩れ去ってしまいます

「この世界が安全である!」といった感覚が脅かされてしまいます。

そうなると、常に「いつ何が起きるのか?」と気にかけながら生活しなければなりません。

常に何かにおびえて過ごさなければならず、気が休まらない日々になります。

誰もが望む平穏な世界とはほど遠い感覚で生きていかなくてはなりません。

トラウマが与える影響の中で最も大きく、本人を苦しめるものではないかと思います。

身体が警戒状態になる

身体が警戒状態になる

トラウマによって、頭痛や腹痛、不眠や動機といった体調不良や身体症状が現れる場合があります。

ショッキングな体験に対する身体の反応で、身体が警戒のサインを発しているのです。

ショッキングな体験が交感神経系を優位にしてしまい、身体の不調を引き起こす状態となってしまいます

身体の症状が優先されるため、背景にあるトラウマが見逃されてしまうパターンもあります。

治療をしても身体の不調が続く際は、注意が必要です。

感情や行動が不安定になる

人や世界が信じられなくなることにより、安心安全の基盤が崩れ去ってしまうと書きました。

そうなると、感情が不安定になってしまいます。

些細なことでイライラしてしまったり、テンションの上下が激しくなったりします。

こうなると、周囲の人からすれば、何かとイライラしている人に見えてしまったりするので、誤解を招きやすいです。

その結果、周囲には味方が減ってしまいます。

これは、孤立につながっていくリスクがあり、症状の悪化が予想される危険なパターンです。

心が解離する

解離とはショッキングな出来事の体験や記憶を自分の心から切り離してしまうことです

体験を心の本体から遠ざけることで、恐さから逃れることができるといった効果があります。

これは無意識に行われる心の機能で、コントロールすることができません。

解離が機能している際は、恐怖や不安の感情を遠ざけているので、日常生活を送ることは可能です。

しかし、ふとしたきっかけで奥底の感情が吹き出してしまったりするので、注意が必要です。

一見、何事もなかったかのように適応することができるため、周囲の人からの理解が得られないと適応が苦しくなる場合があります。

トラウマと向き合うために必要なことは?

トラウマと向き合うために必要なことは?

まず、最初にきちんと専門家に関わることをおすすめします。

心療内科、精神科を受診し、臨床心理士や公認心理師のカウンセリングを利用する必要があります。

専門家と関わったうえで、トラウマと向き合う方法の参考にしたい場合は以下の方法を試してみてください。

納得できないものは読み飛ばしてもらって構いません。

ちょっとでも「やってみようかな」と思えるものを実行してみてください。

「自分は悪くない!」を繰り返し唱えましょう

トラウマの被害者は「あなた」です。決して、あなたの責任で出来事が起こったわけではありません。

そうにも関わらず、自分を責めてしまいます。そう思わせてしまうのが、トラウマなのです。

そのため、せめて「自分は悪くない!」と言葉にして言ってみてください。

言葉にしてみると、少しだけ楽になる場合があります。

少しだけ前向きになることができるおまじないとして「自分は悪くない!」と唱えてみることを実行してみましょう。

生活リズムを整える

生活リズムを整える

安心安全の基盤が崩れ去った状態では人や世界を信じることができません。

そうなると、どんどん自分自身が不安定になってしまいます。そんな時は、生活リズムを整えることが大切です。

不安定な世界のまま、新しいことに挑戦したりすると刺激が強すぎたりする場合があります。

結果として、新たに苦手な出来事を増やすきっかけになってしまう可能性もあります。

なので、早寝早起き朝ご飯から始まる1日を過ごしてみましょう

睡眠について悩みがある方はこちらの記事を読んでみてください。

睡眠障害・不眠症とは何か?それぞれの原因や症状について紹介!

トラウマスイッチを探す

日々の生活の中にはトラウマを思い出させるトラウマスイッチが存在します。

例えば、「静かにしろ!」と怒鳴られながら暴力を受けていた場合、静かにすることに関わるキーワードがトラウマの症状を引き起こす場合があります。

そういったトラウマスイッチに気づくことが大切です。

気づきが生まれてくると、なんとなく嫌な予感がする際に対策ができるようになります

心の安定のためにも、自身のトラウマスイッチを探してみてください。

ほっとする時間を作る

身体の傷を癒すのに必要なのは休息です。それと同様に、心の傷を癒すのに必要なのも休養です。

トラウマになってしまうと身体と心が緊張状態に陥りやすいです。

ほっとする時間を作ることで、生活の中に弛緩のリズムを作り出すことができます。

入浴やお茶、ゲームといったように好きなことをする時間を確保し、リラックスを心がけることが大切です

身近な人がトラウマ・PTSDになった場合は?

身近な人がトラウマ・PTSDになった場合は?

家族や友人、場合によっては職場の同僚がトラウマになってしまう可能性はあります。

周囲の人もどのように関わっていけばいいのか難しいところだと思います。

はれもの扱いは本人を傷つけてしまう可能性がありますし、心配しすぎても負担になってしまう可能性があります。

トラウマを抱えた人たちと関わっていくには距離感が大切です。

「忘れなさい」「気にしないようにしなさい」は言わない

この言葉は正しい言葉かもしれません。しかし、それができないのがトラウマなのです。

「忘れよう…」「気にしないようにしよう…」と考えれば考えるほど、トラウマ体験が頭から離れることができないのです。

場合によっては「忘れられない自分が悪い」と自責してしまうかもしれません。

ねぎらいの言葉かもしれませんが、この2つは心にしまっておく必要があります。

声の大きさや話し方に気を付ける

トラウマ体験が虐待であった場合、大きな声がトラウマ体験を思い出させる可能性があります。

注意をする時こそ、冷静に伝えることが大切です普通の会話の時の話し方が最適です。

大きな声がすべて悪いわけではありません。

楽しい食事会などでは、あまり気にならない場合などもあるようです。

陰性感情(嫌な気持ち)を抱えながらの大きな声がよくないのです。

トラウマについて深く聞かない

トラウマ体験は当事者にとってかなり繊細な話題です。

トラウマ体験を語ることが、当事者の心の傷を広げてしまう可能性があります。

周囲の人は当事者がトラウマになる前の、穏やかな日常を思い出しながら普通に関わっていくのがベストです。

ただ、雑談している際に、自然とトラウマ体験が語られるような場合もあります。

そんな時は、本人が話したいところまで聞いてあげることが安心につながると思います。

あくまで深く聞かないスタンスを心がけてください。

【トラウマ・PTSD】まとめ

【トラウマ・PTSD】まとめ

トラウマ・PTSDは意外と身近な心の病気です。

にも関わらず、心の傷を隠しながら、懸命に日々を過ごしている方々がいます。

トラウマを乗り越えていくにはたくさんの人の助けが必要です。

専門機関や家族、友人、職場の方々などの支えがトラウマを少しずつ癒してくれるはずです。

この記事を読んだ方がトラウマについて理解を深め、トラウマについて考えるきっかけになってくれれば幸いです。

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