「昔のつらい出来事を、ふとした瞬間に思い出して苦しくなる」「あの日から眠りが浅く、ずっと気が張っている」「よく『トラウマ』と言うけれど、本当はどういう意味なのか知りたい」。そんな思いでこのページを開いた方もいるかもしれません。
心に深く残る体験は、誰の身にも起こりうるものです。そして、その体験のあとに心や体に表れる反応は、あなたが弱いから起きるわけではありません。
この記事では、トラウマの意味を簡単に整理したうえで、PTSDとの違い、原因になりうる出来事、よく見られる反応、思い出してしまったときの対処法、相談できる場所、身近な人の支え方までをまとめました。
この記事は、病気かどうかを判断するためのものではありません。つらい状態が続くときは、一人で抱えずに誰かを頼ってください。
トラウマとは?意味を簡単に

トラウマとは、命や身の安全がおびやかされるような強い衝撃を受けた体験によって、心に残った深い傷のことです。日本語では「心的外傷(しんてきがいしょう)」と呼ばれます。
出来事そのものが終わったあとも、その記憶が心や体に影響を与え続けるところに特徴があります。
トラウマの語源と英語の意味
英語の trauma(トラウマ)は、語源をたどると「傷」を表す言葉です。医学の世界では、もともと事故やけがなど体の外傷を指す用語として使われていました。
その後、目には見えない心の傷についても同じ言葉が使われるようになり、心理学や精神医学では「心的外傷」という意味で定着しています。
日常の「トラウマ」と心理学の「トラウマ」
会話の中では「人前での発表がトラウマ」「あのお店の料理がトラウマ」のように、嫌な思い出や苦手意識を軽い意味で表すことがよくあります。
一方、心理学や医療の場面でいうトラウマは、もっと重い体験を指します。事故や災害、暴力、性被害、大切な人の突然の死など、本人が「自分の力ではどうにもできない」と感じるほどの出来事が中心です。
ただし、言葉の使い方に関係なく、つらさの感じ方は人それぞれです。周りから見て小さな出来事でも、本人にとって深い傷になっていることがあります。逆に、大きな出来事を経験しても、強い反応が長く残らない人もいます。出来事の大きさと心の傷の深さは、必ずしも比例しません。
1回の体験と、繰り返される体験
トラウマのもとになる体験は、大きく2つに分けて考えられることがあります。
- 1回だけの強い体験:交通事故、自然災害、犯罪の被害など
- 長い期間くり返される体験:子どものころの虐待、長く続くいじめ、家庭内の暴力など
くり返される体験は、本人がその状況から逃げられないことが多く、自分への見方や人との関わり方にまで影響が広がりやすいといわれています。
トラウマとPTSDの違い
「トラウマ」と「PTSD」は同じ意味で使われることがありますが、正確には違うものです。
トラウマは心の傷やそのもとになった体験を指す言葉で、PTSDは、トラウマになる体験のあとに特定の症状が長く続き、生活に支障が出ている状態に医師が付ける診断名です。つらい体験をした人が、みなPTSDになるわけではありません。
PTSDは何の略?
PTSDは、Posttraumatic Stress Disorder の略です。日本語では「心的外傷後ストレス障害」と訳され、近年は「心的外傷後ストレス症」という訳語も使われています。
PTSDの主な症状
国立精神・神経医療研究センターの「こころの情報サイト」では、PTSDについて、死の危険に直面したあと、その体験の記憶が自分の意思と関係なく思い出されたり、悪夢に見たりして、不安や緊張が続く状態だと説明しています。主な症状は、おおまかに次のようにまとめられます。
- 再体験(侵入):つらい記憶が突然よみがえる、その場面に戻ったように感じるフラッシュバック、くり返し見る悪夢
- 回避:出来事を思い出す場所・人・話題・においなどを避ける
- 考え方や気分の変化:自分を責め続ける、楽しいと感じにくい、感情がまひしたように感じる
- 過覚醒:いつも神経が張りつめている、物音に強く驚く、イライラする、眠れない
出典:国立精神・神経医療研究センター こころの情報サイト「PTSD」
当てはまるものがあっても、それだけで病気だと決める必要はありません。診断は、医師が症状の内容や続いている期間、生活への影響などを総合的に見て行います。気になるときは、自分で判断せず専門家に相談しましょう。
1か月が一つの目安(急性ストレス障害との違い)
強い出来事の直後は、多くの人に眠れない、落ち着かない、思い出してしまうといった反応が出ます。これは心と体が危険に備えようとする自然な反応でもあります。
国立精神・神経医療研究センターの「こころの情報サイト」では、出来事のあと1か月ほどは様子をみて、数か月たっても症状が続く、または悪化している場合はPTSDの可能性を考えて専門家に相談するよう案内しています。数か月から数年たってから症状がはっきりする場合もあるとされています。
名古屋市の解説でも、症状が1か月以内におさまる場合は急性ストレス障害、1か月以上続く場合はPTSDとして区別されています。
複雑性PTSDとは
世界保健機関(WHO)の国際疾病分類 ICD-11 では、PTSDとは別に「複雑性PTSD」という診断が設けられています。PTSDの症状に、「自己組織化の障害」と呼ばれる症状が加わったものと整理されています。
具体的には、感情の調節の難しさ、「自分には価値がない」といった否定的な自己像、人と親しい関係を保つことの難しさなどが続く状態です。長く続く虐待やいじめなど、逃げにくい状況での体験との関連が議論されています。
出典:金吉晴「複雑性PTSD 疾患概念と診断基準」精神医学65巻8号(2023年)、青木省三『ぼくらの中の「トラウマ」 いたみを癒すということ』筑摩書房(2020年)
トラウマになる出来事は意外と身近
日本の成人を対象にした「世界精神保健日本調査」の分析(Kawakami ほか、2014年)では、調査対象者の60%が、生涯に少なくとも1つのトラウマになりうる出来事を経験していました。一方で、PTSDの生涯有病率は1.3%、過去12か月の有病率は0.7%と報告されています。
つらい体験そのものは珍しくないこと、そして体験した人の多くは時間とともに落ち着いていくものの、一部の人には症状が長く残ることが分かります。
トラウマの原因になりうる出来事

「この体験をすれば必ずトラウマになる」という出来事はありません。同じ体験をしても、その人がどう受け止めたか、そのとき周りに支えがあったかによって、心への残り方は変わります。そのうえで、トラウマにつながりやすいとされる出来事を紹介します。
事故・災害
交通事故、火事、地震や豪雨などの自然災害は、ある日突然、安全だと思っていた日常を奪います。予測できず、自分の力ではどうにもできない体験は、心に強い衝撃を残しやすいものです。直接けがをしていなくても、目の前で人が傷つく場面を見たことがきっかけになる場合もあります。
暴力・犯罪・性暴力
殴られる、脅される、襲われるといった暴力や犯罪の被害は、トラウマの代表的なきっかけです。
性暴力の被害もその一つです。本人が望まない性的な行為は、相手が恋人や配偶者であっても性暴力にあたります。性の被害は周りに打ち明けにくく、一人で抱え込みやすい傾向があります。あなたが悪かったわけではありません。一人で抱え込まず、後半で紹介する相談先も頼ってください。
パートナーからの暴力や暴言、行動を制限されることが続いている場合も、心に深い傷を残すことがあります。
いじめ・虐待
無視される、仲間外れにされる、からかわれるといったいじめは、人とのつながりを断たれる体験です。何度もくり返されるうちに、自信や人への信頼そのものが揺らいでしまうことがあります。
子どものころの虐待(体への暴力、性的虐待、育児放棄、心を傷つける言動)も、大人になってから影響が表れることがあります。「しつけ」と言われて育つと、自分が被害にあっていたと気づけず、「悪いのは自分だ」と思い込んでしまう場合もあります。子ども時代の家庭環境と生きづらさの関係は、アダルトチルドレンの意味と原因・特徴の記事でも紹介しています。
大人になってからの職場でのいじめやハラスメントも、強いストレスになります。仕事の場面での対処は、Kimochiのコラム職場いじめの原因・事例・対処法・相談先も参考にしてください。
大切な人との死別
家族や友人、大切な人を亡くす体験も、トラウマにつながることがあります。とくに事故や事件、災害などで突然亡くした場合は、心の準備ができないまま別れを迎えることになり、影響が大きくなりやすいと考えられています。命日や季節の変わり目など、特定の時期に気持ちが沈む人もいます。
恋愛や裏切りの体験
浮気や突然の別れ、信じていた人からの裏切りも、「恋愛がトラウマになった」と表現されることがあります。医療でいうトラウマとは重さが異なる場合もありますが、その後の恋愛で相手を信じられない、近づくのが怖いと感じるなど、長く影響が残ることがあります。浮気の体験に悩む方は、Kimochiのコラム浮気のトラウマとカウンセリングでの向き合い方も読んでみてください。
原因がわからないと感じるとき
「理由ははっきりしないのに、ある場面になると体がこわばる」という人もいます。幼いころの体験で記憶がはっきりしない場合や、心が自分を守るために記憶を遠ざけている場合などが考えられます。
原因を無理に思い出そうとすると、かえって苦しくなることがあります。気になるときは、専門家と一緒に安全な形で整理していきましょう。
トラウマがあるときに見られやすい反応と特徴

トラウマになる体験のあとには、心・体・人間関係にさまざまな反応が出ることがあります。どれも、危険から身を守ろうとする心と体の働きが、出来事のあとも続いている状態と考えると理解しやすいかもしれません。
人や世界が信じられなくなる
ショックの大きな出来事を経験すると、「世の中はおおむね安全だ」「人はそれほど自分を傷つけない」という感覚が揺らぎます。
すると、「また何か起きるのではないか」と身構えたまま毎日を過ごすことになり、心が休まりません。人に心を開きにくくなることもあります。人を信じられない気持ちについては、人間不信になる原因と特徴の記事でも詳しく紹介しています。
体が警戒状態になる

体はまだ危険が続いているかのように反応し、眠れない、動悸がする、息が苦しくなる(過呼吸)、頭痛や腹痛、食欲がない、汗が出るといった不調が出ることがあります。
体の症状ばかりに目が向き、その背景にある心の傷に気づかれないまま過ごしている人もいます。体の検査で異常がないのに不調が続くときは、心の面からも相談してみるとよいでしょう。
感情が揺れやすくなる
ささいなことでイライラする、急に涙が出る、気分の浮き沈みが激しくなるなど、感情のコントロールが難しくなることがあります。
周りからは「怒りっぽい人」と誤解されやすく、人間関係がぎくしゃくして孤立につながることもあります。本人も、自分の反応に戸惑い、さらに自分を責めてしまいがちです。
心が解離する
解離とは、あまりにつらい体験や感情を、心が自分から切り離そうとする働きです。現実感がない、自分を外から見ているように感じる、ある時期の記憶がぼんやりしている、といった形で表れることがあります。
解離は意識してコントロールできるものではありません。表面上は普段どおりに生活できているように見えるため、周りに理解されにくいこともあります。
仕事や恋愛に表れる影響
集中しにくい、ミスが増える、職場の特定の人や場面を避けたくなるなど、仕事に影響が出ることがあります。恋愛では、相手が離れていくのが怖くて不安になる、逆に親しくなるほど距離を取りたくなる、といった形で表れる人もいます。
子どもの場合の表れ方
文部科学省の資料では、子どもは気持ちを言葉にするのが難しいため、頭痛や腹痛、夜尿、食欲不振といった体の症状や行動として表れやすいと説明されています。怖い夢をくり返し見る、体験を遊びの中で再現する、赤ちゃん返りをするといった反応もあります。
また、子どもは不安を抱えていても表面上は明るくふるまうことがあるため、周りの大人が落ち着いた場で話を聞くことが大切だとされています。心配なときは、大人が一人で抱え込まず、学校などとも連携しながら見守りましょう。
心や体の反応に気づいたとき、「こんなことで相談していいのかな」とためらう方もいます。うまく説明できなくても大丈夫です。感じていることを、そのまま話すところから始められます。
トラウマを思い出したときの対処法

ここでは、つらい記憶がよみがえったときに、自分でできる対処法を紹介します。症状が強いときや長く続いているときは、セルフケアだけで乗り切ろうとせず、専門家に相談することを優先してください。
紹介する方法は、合うもの・合わないものがあります。「これならできそう」と思えるものだけ試してみてください。
フラッシュバックが起きたら「いま」に意識を戻す
フラッシュバックが起きると、過去の場面にいるように感じます。そんなときは、いま自分がいる場所に意識を戻す工夫が役立つことがあります。
- 足の裏が床についている感覚に意識を向ける
- 目に見えるものを5つ、声に出して挙げてみる
- 冷たい水で手を洗う、好きな香りをかぐ
- 「今日は○月○日で、ここは自分の部屋」と、日付と場所を確かめる
息が苦しいときは、ゆっくり吐く
思い出したときに呼吸が浅く速くなり、過呼吸のようになることがあります。息を吸うことより、ゆっくり長く吐くことを意識してみてください。国立精神・神経医療研究センターの「こころの情報サイト」でも、呼吸法は不安を和らげるのに役立つことが多いと紹介されています。
ただし、胸の痛みやしびれが強いとき、呼吸が落ち着かないときは、体の病気の可能性もあるため医療機関を受診してください。
眠れない夜や悪夢のあとに
悪夢で目が覚めたときは、明かりをつけて部屋の様子を確かめ、水を飲むなどして「いまは安全だ」と体に伝えましょう。眠れない状態が続くと、心の回復にも影響します。睡眠の悩みについては、睡眠障害の種類と症状の記事も参考にしてください。不眠が続く場合は、一人で抱えず専門家に相談しましょう。
きっかけ(トラウマスイッチ)に気づく
特定の音、におい、言葉、季節など、つらい記憶を呼び起こすきっかけがあることがあります。例えば、怒鳴られながら暴力を受けていた人は、大きな声を聞くだけで体がこわばることがあります。
どんなときに反応が出やすいかを少しずつ知っておくと、「いまのはきっかけに反応したんだ」と理解でき、前もって心の準備をすることもできます。ただし、無理にきっかけに近づいて慣れようとする必要はありません。
「自分は悪くない」と言葉にする
被害を受けた人ほど、「自分が悪かったのでは」と責めてしまうことがあります。それもトラウマの反応の一つです。
出来事が起きたのは、あなたのせいではありません。「自分は悪くない」と声に出したり、紙に書いたりするだけでも、少し気持ちが楽になる場合があります。
生活のリズムと、ほっとする時間を守る

心が不安定なときほど、起きる時間、食事、眠る時間をなるべく一定にすることが支えになります。新しいことに挑戦するのは、気持ちが落ち着いてからでかまいません。
入浴、温かい飲み物、好きな音楽、散歩など、ほっとできる時間を一日の中に意識して作りましょう。いまの感覚に注意を向ける練習として、マインドフルネスの基本のやり方を取り入れる人もいます。
トラウマと長く付き合っていくための方法は、次の記事でも詳しく紹介しています。
トラウマのつらさを相談できる場所
トラウマのつらさは、一人で抱え込むほど重くなりやすいものです。ここでは、カウンセリングでできることと、PTSDの治療について紹介します。
カウンセリングでできること
カウンセリングは、病気を診断したり治療したりする場ではありませんが、つらい気持ちを安全な場で言葉にし、整理していくことをサポートします。「誰にも言えなかったことを初めて話せた」と感じる時間が、心の負担を軽くするきっかけになることもあります。
オンラインカウンセリング「Kimochi」では、心理職で唯一の国家資格である公認心理師に、スマホから相談できます。顔出し不要・匿名で利用でき、ビデオ・チャット・ペアから相談スタイルを選べます。土日祝や平日の夜も相談でき、相性が合わなければ何度でもカウンセラーを変更できます。
声に出して話すのがつらいときは、チャットで文字にして伝えることもできます。出来事の詳しい内容を無理に話す必要はなく、「最近眠れない」「ふとしたときに思い出してしまう」といった、いまの困りごとから話して大丈夫です。相談したい内容に合わせて、カウンセラーやプランを選べます。
通院中の方は、主治医の許可を得たうえで利用してください。医療機関とカウンセリングの違いは、Kimochiのコラムオンラインカウンセリングと心療内科の違いで紹介しています。
PTSDの治療
国立精神・神経医療研究センターの「こころの情報サイト」では、PTSDの治療として、トラウマに焦点を当てた認知行動療法(持続エクスポージャー療法、認知処理療法など)や、眼球運動による脱感作と再処理法(EMDR)といった心理療法が紹介されています。薬物療法では、SSRIなどの抗うつ薬が使われることがあると説明されています。
どの治療が合うかは、医師が本人の状態を見て判断します。つらい体験のあとの反応が数か月たっても続く、生活に支障が出ているときは、心療内科や精神科への相談も考えてください。
命の危険を感じるほどつらいときは #いのちSOS(0120-061-338)、性暴力の被害は「#8891」、DVは DV相談+(0120-279-889)、身の危険があるときは110番へ。
外に出るのがつらいときや、人に会うのが怖いときでも、自宅から話せる場所があります。Kimochiで、いまの気持ちを聞いてもらうところから始めてみませんか。
身近な人がトラウマを抱えているときの接し方

家族や友人、職場の同僚がつらい体験をしたとき、どう接すればよいか迷う人は多いはずです。腫れ物に触るような扱いも、心配しすぎることも、本人の負担になることがあります。ほどよい距離感を意識しましょう。
「忘れなさい」「気にしないで」と言わない
励ますつもりの言葉でも、「忘れたほうがいい」「気にしないようにしよう」は、本人を追い詰めることがあります。忘れようとするほど思い出してしまうのが、トラウマの苦しさだからです。「忘れられない自分がいけない」と自分を責めるきっかけにもなりかねません。
声の大きさや話し方に気を付ける
怒鳴り声の中で被害を受けた人にとって、大きな声は記憶を呼び起こすきっかけになることがあります。注意や相談ごとを伝えるときこそ、落ち着いた普段どおりのトーンで話すことを心がけましょう。
無理に聞き出さない
出来事の詳しい内容を聞き出そうとすると、本人がつらい場面を思い出し、傷を深めてしまうことがあります。本人が自分から話し始めたときは、話したいところまで静かに聞き、評価やアドバイスを急がないことが安心につながります。
支える人も一人で抱え込まない
身近な人を支える側も、知らないうちに疲れがたまっていきます。本人に相談を勧めるのと同じように、支える側も一人で抱え込まずに相談してかまいません。抱えている悩みをどこに相談すればよいか迷うときは、Kimochiのコラムストレスの相談先の選び方も参考にしてください。
つらい体験のあとの心の成長(PTG)
心理学では、PTG(Posttraumatic Growth:心的外傷後成長)という考え方があります。非常につらい出来事と向き合い、もがく過程の中で、人生の優先順位が変わる、人の痛みに敏感になる、身近な人とのつながりを大切に思うようになるといった変化が生まれることを指します。
これは「つらい体験をプラスに考えなければいけない」という意味ではありません。前向きになれない時期があって当然ですし、成長を感じられなくても何の問題もありません。
ただ、苦しみの中にいるときに「この先の人生には、いまとは違う景色もあるかもしれない」と思える余白を残しておくことは、心の支えになるかもしれません。
よくある質問
トラウマについて、よく寄せられる質問にお答えします。
Q. トラウマとPTSDは何が違うのですか?
トラウマは、強い衝撃を受けた体験や、それによる心の傷を指す言葉です。PTSDは、そうした体験のあとに、つらい記憶がよみがえる、思い出させるものを避ける、神経が張りつめるといった症状が続き、生活に支障が出ている状態に医師が付ける診断名です。つらい体験をした人がみなPTSDになるわけではありません。
Q. トラウマは英語で何といいますか?
英語では trauma といいます。語源は「傷」を表す言葉で、もともとは体のけがを指していました。心の傷を表す場合は、psychological trauma(心的外傷)ともいいます。
Q. 原因がわからないのに、特定の場面で苦しくなります
はっきりした記憶がなくても、過去の体験がきっかけで心や体が反応している場合があります。一方で、ほかの心身の不調が関係していることもあります。自分で原因を探りすぎず、専門家に相談してみてください。
Q. トラウマを思い出して眠れないときはどうすればいいですか?
明かりをつけて部屋の様子を確かめる、ゆっくり息を吐く、温かい飲み物を飲むなど、「いまは安全だ」と体に伝える工夫を試してみてください。眠れない日が続く、悪夢が何度もくり返されるときは、一人で抱えず専門家に相談しましょう。
Q. 恋愛のトラウマもトラウマに入りますか?
日常会話では、失恋や浮気などのつらい恋愛体験を「トラウマ」と呼ぶことがよくあります。医療でいうトラウマとは重さが違う場合もありますが、苦しさが本物であることに変わりはありません。相手からの暴力や性的な行為の強要があった場合、あなたは悪くありません。一人で抱え込まないでください。
Q. 仕事に行けないほどつらいときは、どこに相談すればいいですか?
職場に産業医や保健スタッフがいれば、働き方について相談できます。気持ちの整理には、カウンセリングも役立ちます。無理を続けず仕事を休むことも、回復のための大切な選択肢です。
まとめ

トラウマは、誰にでも起こりうる心の傷です。この記事のポイントを振り返ります。
- トラウマは、命や安全がおびやかされるような体験によって残った心の傷(心的外傷)のこと
- PTSDは、つらい記憶の再体験・回避・考え方や気分の変化・過覚醒などが続き、生活に支障が出ている状態に医師が付ける診断名
- 出来事の直後の反応は自然なもの。1か月ほどを目安に、数か月たっても続くときは専門家に相談する
- 原因になりうるのは、事故・災害、暴力・性暴力、いじめ・虐待、突然の死別など。出来事の大きさと傷の深さは比例しない
- 思い出したときは、「いま」に意識を戻す、ゆっくり息を吐く、自分を責めないことが助けになる
- つらさは一人で抱えず、カウンセリングなど安心して話せる場所を持つ
- 身近な人は「忘れなさい」と言わず、無理に聞き出さず、落ち着いた距離感で見守る
つらい体験を抱えながら、毎日を懸命に過ごしている人はたくさんいます。あなたが感じている苦しさは、我慢しなければならないものではありません。信頼できる人やカウンセリングなど、頼れる場所を一つずつ増やしていきましょう。
話すことで、少しだけ肩の力が抜けることがあります。Kimochiの公認心理師が、あなたのペースに合わせてお話を伺います。
※Kimochiはオンラインカウンセリングサービスであり、医療行為・診断・診療は行いません。通院中の方は、主治医の許可を得たうえでご利用ください。
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