誰しもが何らかのストレスを抱え、心身の疲れを感じやすい現代社会。
健康的な適度な疲れであれば問題ありませんが、心身を蝕むような慢性的な疲れには要注意!改善の必要があります。
ここでは、誰もが抱える「疲れ」について、その原因や対処法について解説していきます。
そもそも疲れとは?疲労の正体についてメカニズムを解説
「疲れ」は、病気とは違い、人間なら誰しも感じる日常的な体力的な感覚です。
しかし、日常的な感覚であるがゆえに、「これくらいなら大丈夫」と、その疲れを抱えたまま、多忙な日常を継続してしまっている人も多いのではないでしょうか?
では、そもそも「疲れ」とは何でしょう。
日本疲労学会によると、疲労とは「過度の肉体的および精神的活動、または疾病によって生じた独特の不快感と、休養の願望を伴う身体の活動能力の減退状態」と定義されています。
疲労には、身体を動かすことによって生じる「肉体的疲労」と、ストレスや心身の緊張状態から生まれる「精神的疲労」の両方が存在し、どちらの疲労も、実は、発熱や痛み同様、身体から出されている危険信号なのです。
そのため、疲れを感じているのに放置し続けるのは危険です。自分自身の疲れの状態について、しっかり理解するようにしましょう。
参考資料:抗疲労臨床評価ガイドライン 日本疲労学会
疲れている人の特徴(サイン)は?
慢性的な倦怠感や身体の痛み(頭痛、肩こり、腰痛など)が続く
誰しも、激しい運動や心身に負荷のかかる仕事や作業をした後は疲労感を感じるものです。
しかし、日常的に疲れている人の特徴は、その疲労感が慢性的な倦怠感となっているということです。
また、頭痛や肩こり・腰痛など、常にその痛みが継続していることがあたりまえな状態になってしまっていることもあります。
充実した物事の後の「心地よい疲れ」とは違い、ずっと重々しい身体の状態が継続してしまっているために、常にだるさを感じている状態です。
睡眠不足や不眠症など、睡眠に関する問題を抱えている
多忙を極め時間に追われる生活を日常的に送っていると、どうしても睡眠不足に陥りがちです。
物理的に睡眠の時間を確保できないために「睡魔に襲われる」こともあれば、「寝ても寝ても眠たい」といった状態になることもあります。
また、仕事のことや抱えている問題が常に頭の中を占め、入眠時も頭が活性化してしまっているため眠りにつけないといった、不眠症気味の症状を起こすこともあります。
眠れないと感じる原因について詳しく知りたい方は、こちらの記事がオススメです!
集中力や思考力、記憶力が散漫になる
慢性的な倦怠感(けんたいかん)や身体の痛み、睡眠に関する問題を抱えた状態が日々続くと、仕事のパフォーマンスにも影響を及ぼすようになります。
身体の疲れが取れていないだけではなく、脳も慢性疲労状態が続いているためです。
疲労が重なると「以前のようにすっきり集中することができない」「考えが頭の中でまとまらない」「物忘れやうっかりミスが増えた」といった症状が起きることがあります。
些細なことでイライラしたり感情的になる
身体的疲労が続くと、エネルギーは枯渇しているのに、身体に鞭を打ちながら自分を動かしている状態になるため、心理的にも余裕がなくなることもあります。
心に余裕がなくなると、通常では気にならない些細なことにもイライラしてしまったり、感情的になって気持ちが浮き沈みしてしまったりします。
壺の中のストレスがあふれ出してしまった結果、そのような感情が引き起こされてしまうのです。
好きなことに対してもエネルギーが湧かない
慢性的な疲労を抱えていると、せっかくの休日でも「何もせず、ただただ寝ていたい」というような状態になることもあります。
元気な時であれば、休日や仕事終わりに趣味に没頭したり、人付き合いを楽しむことができていた人でも、心身のエネルギーが枯渇している状態であるため、好きなことに対してにも意欲がわかず、無気力になってしまうのです。
どうして人は疲れるのか?疲れる原因について
- 活性酸素による酸化ストレス
- 自律神経細胞の傷つき
- 免疫細胞の傷つき
活性酸素による酸化ストレス
運動などエネルギーをたくさん使用する活動を行うと、体内の酸素が多く消費され、活性酸素が多く発生します。
体内には、活性酸素を体内から除去する役割を持つ抗酸化酵素というものがありますが、活性酸素がこの抗酸化酵素の量より上回ってしまうと、活性酸素により自立神経の細胞や筋肉が攻撃されてしまいます。
これらの酸化ストレスが疲労へつながることとなります。
自律神経細胞の傷つき
自律神経には昼間に身体を活発に動かしている時に優位になる「交換神経」と、夜間に身体を休め、リラックスしている時に優位になる「副交換神経」があります。
過剰に働いたり、長時間脳内をフル活動させることを続けていると、次第に交換神経と副交換神経のバランスが崩れることとなり、活性酸素が大量に生み出されます。それにより疲労が発生することになります。
免疫細胞の傷つき
身体には、病原菌やウイルスから身体を守るための免疫システムが備わっており、その免疫システムには多くの免疫細胞が関わっています。
それらの免疫細胞が身体の細胞や各器官の傷つきをみつけると、脳や神経にサインとなる物質を放出し、それによりだるさや疲れを感じるようになります。
これも、免疫システムからの危険信号の一つと言ってよいでしょう。
疲れがたまりすぎたらどうなるか?疲れを放っておくとどうなる?
疲れが溜まりすぎると、今までは一晩寝たら解消されていた疲れが、寝てもまったく解消されない。
ちょっとしたことでもエネルギーを消費して、身体がぐったりしやすいといった症状が現れやすくなります。
疲れは身体からの危険信号でもあるので、その危険信号を無視して心身を酷使し続けていると、身体の病気や心の病気を招くことにもつながります。また、すでに病気にかかってしまっているために、疲労が増してしまっている。ということも考えられます。
「まだ大丈夫!」と過信はしすぎず、自分の体調をこまめに観察し、疲れが溜まっていると感じた時は、自分自身で自分をしっかり休ませてあげることが大切です。
仕事で疲れた時の対処法は?疲れが溜まっている時の対処法
疲れには「心の疲れ」と「体の疲れ」の両方があります。
日々の仕事の忙しさに追われ、身体も神経も酷使しているため、毎日ぐったり…
働き盛りの世代の方には、このような状態に陥っている人も多いのではないでしょうか?
ここではそのような方が少しでも疲れを取り除き楽になれるよう、「心の疲れ」「体の疲れ」それぞれの対処法について解説します。
心の疲れ・ストレス疲れにおける5つの対処法
- 一日の中にリラックスできる時間を設ける
- 好きなことや趣味に打ち込む
- 気のおけない友人と過ごす時間をつくる
- 自分の抱えている気持ちや感情を言語化する
- 生活の中に瞑想の時間を取り入れる
一日の中にリラックスできる時間を設ける
心の疲れを回復させるためには、一日の中のどこかで、リラックスできる時間を意識的に設けることが大切です。
美味しい物を食べる、好きな音楽を聞く、など、自分が心地よさを感じるものであれば何でもかまいません。
心の疲れやストレスでいっぱいになっている時は、頭の中もその原因になっていることを反復して考え続けてしまう傾向があります。短時間でも良いので、身体だけではなく、頭や心の中をリラックスさせ、リフレッシュできる時間をつくることが大切です。
好きなことや趣味に打ち込む
一日の中でリラックスできる時間を設けること同様、好きなことや趣味に打ち込み、心の疲れの原因になっている物事から心理的に距離をとることは、とても大切です。
自分が夢中になれることに取り組むことで、「仕事とプライベート」「他者との人間関係と自分自身」などの間に線引きをすることができます。疲れていると、ダラダラと時間を過ごしがちですが、リフレッシュのために、有意義な自分時間を過ごすようにしましょう。
気のおけない友人と過ごす時間をつくる
心の疲れをほぐすためには、気を遣う必要のない、自分のことをよく理解してくれている友人と過ごす時間をつくることが大切です。
仕事のストレスや人間関係の悩み、そのようなもので心が疲弊している時は、身体と共に心も硬く強張り、神経が緊張状態にあります。
その強張りをほどくには、友人とたくさんの会話をし、笑い合うことが一番です。疲れていても、家に閉じこもらず、友人と会う時間をつくりましょう。
自分の抱えている気持ちや感情を言語化する
ストレスを抱え、それが原因で心の疲れを招いてしまっている時は、心の中のモヤモヤを言語化し、吐き出すということが大切になります。
「モヤモヤ」や「イライラ」といった漠然とした気持ちや感情をそのままにしていると、マイナス感情が未消化なまま自分の心の中に溜まり、自分の心をさらに重くしてしまうためです。
家族や友人に話を聞いてもらったり、日記など文章にして書き出すなど、言語化をすることで、心の中の整理をつけることが大切です。
生活の中に瞑想の時間を取り入れる
心が疲れている時は、リラックスやリフレッシュを心がけようとしても、常に心がストレス源に囚われてしまっているため、そこから離れられないということがよくあります。
そのような悩みを持つ人は、瞑想を生活の中に取り入れてみると良いでしょう。
瞑想をすることで、目の前の物事に囚われず、心を無にして脳をリフレッシュすることができるようになります。
短時間でもよいので毎日の習慣にするとよいでしょう。
体の疲れにおける5つの対処法
- 良質な睡眠をしっかりとる
- 栄養バランスのとれた食事をとる
- 規則正しい生活や、無理のない時間配分での行動を心がける
- 湯船に入り、身体を温めると共に心をゆるめる
- 適度な運動やストレッチを取り入れる
良質な睡眠をしっかりとる
肉体疲労を回復させるために何よりも大切になることが、良質な睡眠をとることです。
多忙を極めると、どうしても睡眠時間が削られがちですが、なるべく、毎日同じだけの睡眠時間を確保できるように努めることが大切です。
寝る前に、ベッドの中でスマホを触ったり動画を見てしまうことも、睡眠導入の妨げになると言われています。寝る前のスマホ使用も控えるよう心がけましょう。
栄養バランスのとれた食事をとる
肉体疲労を回復させるために睡眠と同じくらい大切なことは、栄養バランスのとれた食事をとることです。
忙しくなると、食事スタイルにも影響が出て、毎日の食事回数が不規則になったり、外食やコンビニ弁当の回数が増えてしまうなど、食事に関する問題が起きがちです。
日頃からしっかり栄養バランスのとれた食事をし、疲れにくい、疲れの溜まりにくい身体をつくっておくことも大切です。
規則正しい生活や、無理のない時間配分での行動を心がける
仕事・やるべきことに追われている時は、どうしてもそちらが優先されることとなり、生活リズムが崩れことが多いです。
生活リズムの崩れから、睡眠や栄養の問題が起きるとも言えます。
難しいことではありますが、忙しい中でもなるべく普段通りの生活スタイルを崩さないよう心がけましょう。
自分自身で「もっとがんばれる」と、けじめなく忙しさを生み出し続けていることもあります。時間配分を設け、自分で行動を切り替えることも大切です。
湯船に入り、身体を温めると共に心をゆるめる
その日の疲れをその日中に、手っ取り早くやわらげることができるのが入浴です。
忙しくなると、時短のためにと毎日の入浴をシャワーだけで済ませてしまう人も多くいます。しかし、シャワーだけでは疲労は回復されません。
38度〜40度のお湯にゆっくりつかることで血管が広がり、疲労の解消にもつながるのです。また、お風呂に入り身体を温めることで、ぐっすり眠れるという効果もあります。
適度な運動やストレッチを取り入れる
疲れているからといって、休日も家でずっとゴロゴロしていると、さらに疲労感が増したという経験をしたことがある人もいるでしょう。
肉体疲労を回復するためには、日常生活の中に適度な運動やストレッチを取り入れるといいでしょう。
軽いウォーキングやランニング、ヨガやストレッチなど、心身のリフレッシュにつながる運動を選び、適度に身体を動かす習慣をつけることが大切です。
まとめ
「疲れ」は日常的に誰しもが感じる感覚ですが、健康状態を良好に保つための体内からの危険信号の一つでもあります。
健康的な疲れと危険信号としての疲れの違いを理解し、「体の疲れ」「心の疲れ」それぞれに応じた対処を心がけましょう。
厳しい現代社会では、がんばりすぎて心身の不調を招きがちです。しかし、本来は、自分自身が自分を一番に労わってあげることが大切です。
自分自身の健康状態を良好なまま維持し、その上で誰かの役に立てる自分であることが理想的な状態なのです。
溜め込みすぎた慢性疲労をまとめて解消しようとするのではなく、日頃から疲れを取り除くことを意識し、健康的な生活を送るよう心がけましょう。