「それは甘えだよ」
「もっと強くなりなさい」
「泣いてどうにかなるの?」
そう言われて育った人は、決して少なくありません。
厳しい家庭環境の中で、つまずいたときには「気持ちの問題だ」「努力が足りない」と叱られ、泣いても「感情に流されるな」と突き放される――。
そんな言葉に繰り返しさらされるうちに、「繊細であること=弱いこと」と思い込むようになってしまうこともあります。
しかし最近、「もしかしてこれは“甘え”ではなく、HSPという気質なのではないか」と考える人が増えています。
では、HSPとはどのような特徴を持つのでしょうか?
HSP(Highly Sensitive Person)とは?
HSPとは、感受性が非常に高く、周囲の刺激や人の感情に敏感に反応しやすい“気質”のことです。
病気や性格ではなく、生まれ持った特性とされており、人口のおよそ15〜20%が該当すると言われています。
- HSPの人には、次のような傾向が見られます。
- 人の表情や言葉の裏にある“気持ち”を敏感に察してしまう
- 人間関係において必要以上に気を使ってしまう
- 小さなことでも深く傷つき、考え込む傾向がある
- 誰かの機嫌が悪いと、自分のせいかもしれないと感じてしまう
こうした特徴に思い当たる方は、HSPの気質を持っている可能性があります。
HSPの人は、誰よりも“感じやすく、気づきやすい”存在なのです。
HSPだから「生きづらさ」を感じた高校での人間関係
小学生・中学生までは大きな人間関係のトラブルもなく過ごしてきたとしても、高校という新たな環境で、思いがけず「生きづらさ」と出会うことがあります。
たとえば、ちょっとした発言や態度が「めんどくさい」と言われたり、
「考えすぎ」「すぐ泣きすぎ」「なんでそんな性格なの?直したら?」と、心に突き刺さるような言葉を受け取ったり。
性格が変わったわけでもないのに、突然周囲の目が冷たく感じられるようになり、
自分の繊細さそのものが“悪いもの”のように思えてしまう――そんな経験をしたことはありませんか?
こうした出来事は、HSPの人にとって人間関係の苦手意識や自己否定につながりやすくなります。
社会に出てからも続く、“自分だけが疲れていく感覚”
高校時代に感じた繊細さへの違和感や孤独感は、社会人になってからも続く場合があります。
職場では、上下関係や同僚とのコミュニケーション、チームの空気感など、HSPの人にとって刺激の多い環境が日常です。
- 上司の一言を何度も反芻(はんすう)してしまう
- 何気ない表情や言葉に深く傷ついてしまう
- 雑談や飲み会で気を張りすぎて、帰宅後どっと疲れてしまう
こうした状況が重なることで、「自分だけがなぜこんなに疲れるのか」「また“甘え”だと思われるのではないか」と感じ、次第に心がすり減っていってしまうのです。
「甘えている」と言われ続けた心のクセ
「それは甘えだよ」
そんなふうに繰り返し言われてきた人は、自然と「泣くのは弱さ」「落ち込むのは怠け」という思い込みを抱えてしまいがちです。
だからこそ、つらくても「努力が足りないだけ」「頑張ればなんとかなる」と、自分を追い詰めてしまいます。
本当は疲れているのに、本音を誰かに話したいのに、「これくらいでつらいって言ったらまた甘えって思われる」と自分の気持ちを否定し続けてしまうのです。
HSPは“甘え”ではない
HSPという言葉を知ることで、自分の感じ方に意味を見出せるようになる方も多くいます。
今まで「弱さ」だと思っていたものが、実は“人よりも豊かな感受性”であることに気づけるのです。
- 人の気持ちに深く寄り添える
- 細やかな配慮ができる
- 小さな変化にも敏感に気づける
これらは、誰もが持っている力ではありません。
ただし、この感受性を持ったまま生きていくには、自分を守る工夫も必要です。
HSPと向き合うための考え方
「気にしすぎ」ではなく「丁寧に感じている」と捉える
自分の感情を否定するのではなく、「私はこう感じる人なんだな」と受け止めることが、心を軽くする第一歩になります。
無理に強くならなくていい
強さとは、泣かないことや耐えることではありません。
本当の強さとは、自分の繊細さを受け入れ、必要なときには立ち止まれる柔軟さを持つことです。
誰かに話すことは“甘え”ではない
気持ちを言葉にすることは、決して弱さではなく、自分を守るための“行動力”です。
一人で抱えず、信頼できる人や専門家に相談することも大切な選択肢です。
HSPの特性を「なんでそんな性格なの?」と責めないように
他人の何気ない言葉に深く傷ついてしまうことがあっても、それは性格が悪いからではありません。
それだけ「感じる力が強い」ということです。
これまでの人生で「甘え」と言われても、懸命に生きてきた。
その事実こそが、本当の強さの証です。
これ以上、自分を責めなくても大丈夫。
少しずつでも、「このままの自分でもいい」と思える未来を、自分に許してあげてください。
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