「どうして自分はこんなに自分を好きになれないんだろう」「周りの人は普通に自信をもって生きているのに」。頑張っても満たされない気持ちが続くと、自分の性格そのものに問題があるように思えてしまいますよね。
けれど、自己肯定感の低さは、あなたが弱いからでも、努力が足りないからでもありません。多くの場合、子どものころの環境や傷ついた経験、そこから身についた考え方のくせなど、いくつかの原因が重なって形づくられています。
この記事では、自己肯定感が低くなる原因を「家庭環境」「学校や人間関係」「考え方のくせ」「社会や環境」「心身の疲れ」「気質や特性」に分けて、心理的な背景からひも解きます。そのうえで、原因に気づいたあとの向き合い方と相談先を紹介します。
そもそも自己肯定感が低いとはどんな状態?
原因を考える前に、「自己肯定感が低い」とはどういう状態なのかを確認しておきましょう。
自己肯定感の意味をおさらい
自己肯定感とは、よいところも足りないところも含めて「ありのままの自分には価値がある」と受け止められる感覚のことです。成果や人からの評価で上下する「自信」とは違い、自分の存在そのものへの安心感にあたります。
自己肯定感が低い状態とは、この土台が揺らいでいて、何かを達成したり人に認められたりしたときにしか、自分をよしと思えない状態です。自己肯定感の意味や、自己効力感・自尊心との違いは、次の記事で詳しく解説しています。
自己肯定感が低いときに見られるサイン
次のような状態が続いているときは、自己肯定感が下がっているのかもしれません。
- 褒められても「お世辞だろう」と素直に受け取れない
- 人と自分を比べて、劣っているところばかり探してしまう
- 小さな失敗を「やっぱり自分はだめだ」と結びつける
- 嫌われるのが怖くて、言いたいことをがまんする
- 人に頼まれると断れず、自分のことは後回しになる
なぜ自己肯定感が低いままになりやすいのか
自己肯定感が低いと、失敗を恐れて挑戦を避けるようになります。挑戦しなければ「できた」という経験も増えないため、さらに自信をなくすという循環が起こります。
また、自分を低く見ていると、うまくいったことは「たまたま」、失敗は「自分のせい」と受け取りやすくなります。こうして同じ出来事からも否定的な証拠ばかりが集まり、低い自己評価が強化されていきます。自己肯定感の低さは、一度身につくと自分では気づきにくい「心の習慣」のような面があるのです。
原因①子どものころの家庭環境と親との関係
自己肯定感の土台は、主に幼少期から思春期にかけて、身近な大人との関わりの中で育つと考えられています。親が悪い人だったかどうかではなく、「ありのままの自分を受け止めてもらえた」と感じられたかどうかが大きく関わります。
否定や叱責が多かった
「なんでできないの」「だからあなたはだめなのよ」といった言葉を日常的に受けていると、子どもは「自分はだめな存在だ」というイメージを心の中に取りこみます。大人になって親の言葉を忘れていても、自分を責める声として残っていることがあります。
条件つきでしか認められなかった
テストでよい点を取ったとき、手伝いをしたときなど、何かを達成したときだけ褒められる環境では、「役に立たなければ価値がない」という思いこみが育ちやすくなります。この思いこみがあると、大人になっても休むことや失敗することに強い罪悪感を覚えます。
きょうだいや周りの子と比べられた
「お姉ちゃんはできたのに」「〇〇ちゃんを見習いなさい」と比べられ続けると、自分の価値を他人との比較で測るくせがつきます。大人になってからも、職場の同期や友人と比べて落ちこむパターンにつながりやすくなります。
過保護・過干渉で自分で選ぶ機会がなかった
親が先回りして何でも決めてしまうと、子どもは自分で選んで、失敗して、立ち直るという経験を積めません。その結果、「自分の判断は信用できない」と感じ、大人になっても決断を人に任せがちになることがあります。
親に甘えられず、顔色をうかがっていた
親が忙しかったり、気分の波が大きかったりして、甘えたい気持ちを出せずに育った人もいます。親の機嫌を見て行動するくせが身につくと、自分の気持ちより相手の気持ちを優先し、「自分の気持ちは大切にされなくていい」と感じやすくなります。
家庭の不和や暴力・暴言の中で育った
両親のけんかが絶えない、家の中で暴力や暴言があったといった環境では、子どもは安心して過ごせません。「自分がいい子にしていれば」と家庭の問題を自分のせいだと感じてしまう子どももいます。こうした経験は、大人になっても自分を責める気持ちとして残ることがあります。
ここで大切なのは、原因に気づくことは、親を責めるためではないということです。親もまた、精一杯だったのかもしれません。原因を知る目的は、「自分がだめだから」ではなく「そう感じるようになった理由があった」と理解し、自分を責める気持ちをゆるめることにあります。
原因②学校や人間関係で傷ついた経験
家庭以外での経験も、自己肯定感に大きな影響を与えます。とくに強いショックを受けた出来事は、心の傷(トラウマ)として長く残り、似た場面に出会うたびに当時の気持ちがよみがえることがあります。時間がたっても苦しさが和らがないときは、専門家と一緒にゆっくり扱っていくことが大切です。
いじめや仲間外れ
いじめや仲間外れの経験は、「自分はここにいてはいけない存在だ」という感覚を残しやすいものです。表向きには忘れたつもりでも、新しい集団に入るときに強い不安を感じたり、人の笑い声が自分への悪口に聞こえたりすることがあります。
人前での失敗や、理不尽に叱られた経験
発表で笑われた、先生に皆の前で叱られた、頑張ったのに結果が出なかった。感受性の強い時期のこうした経験は、「目立つと傷つく」「意見を言うと否定される」という警戒心として残ることがあります。
恋愛や友人関係での否定
大切な人から否定されたり、裏切られたりした経験も、自分への見方を揺るがせます。「自分は大事にされない人間だ」と結論づけてしまうと、その後の人間関係でも同じ思いこみを確かめるような行動をとりやすくなります。自信のなさから恋人の気持ちを何度も確かめずにいられない男性は、彼女への依存をやめたいときの心理とやめる方法も読んでみてください。
原因③考え方のくせ(受け取り方のゆがみ)
過去の経験から身についた考え方のくせが、いまの自己肯定感の低さを支えていることもあります。心理学の分野でも、認知行動療法などでは、こうした受け取り方の偏りに気づくことが大切だとされています。代表的なものを紹介します。
完璧主義と「〜すべき」思考
「100点でなければ意味がない」「迷惑をかけてはいけない」「いつも笑顔でいるべき」。高い基準を自分に課すほど、いまの自分は常に不十分に見えます。真面目で責任感が強い人ほど、このくせをもちやすい傾向があります。
白か黒かで考える
一つ失敗しただけで「全部だめだった」と考えてしまうくせです。うまくいった部分があっても見えなくなり、自分への評価が極端に下がります。
よいことを割り引き、悪いことを拡大する
褒められると「運がよかっただけ」と割り引き、注意されると「自分は役に立たない」と大きく受け取ってしまうくせです。どれだけ成果を出しても、自己評価が上がりにくくなります。
何でも自分のせいだと思う
上司の機嫌が悪い、友人の返信が遅いといった出来事を、「自分が何かしたからだ」と結びつけてしまうくせです。本当は相手の事情であることも多いのに、自分を責める材料にしてしまいます。自分を責める気持ちが止まらないときは、自己嫌悪に陥る原因と克服方法も参考になります。
こうしたくせは、つらい環境で自分を守るために身についたものでもあります。くせがあること自体を責める必要はありません。「いま、白か黒かで考えているかも」と気づけるだけで、少し距離をとれるようになります。
原因④社会や環境からの影響
自己肯定感の低さは、個人の問題だけでなく、まわりの環境からも影響を受けます。
SNSで比べる機会が増えた
SNSを開くと、他人の昇進や結婚、旅行、すてきな暮らしが次々に目に入ります。人は投稿したい場面を選んで載せているとわかっていても、自分の何気ない日常と他人のいちばん輝いている瞬間を比べてしまいがちです。
謙遜を大切にする文化
日本では、自分を控えめに表現することが美徳とされる場面が多くあります。謙虚さは大切な姿勢ですが、「自分なんて」と言い続けるうちに、本心でもそう思いこんでしまうことがあります。
こども家庭庁が2023年に行った「我が国と諸外国のこどもと若者の意識に関する調査(令和5年度)」でも、13〜29歳で「今の自分が好きだ」に「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と答えた日本の若者は53.4%にとどまっていました(出典:こども家庭庁「こども・若者に関する調査研究」)。
職場での評価やプレッシャー
大人になると、職場での評価が自己肯定感に大きく影響します。努力が認められない、否定的なフィードバックばかり受ける、人間関係に気をすり減らすといった状況が続くと、自分への信頼が少しずつ削られていきます。大人ならではの背景や、30代・40代で自己肯定感が下がりやすい理由は、自己肯定感が低い大人の特徴と原因で詳しく紹介しています。
原因⑤ストレスや心の不調が影響していることも
最近になって急に自分のことが嫌いになった、以前は気にならなかったことで自分を責めるようになった、という場合は、ストレスや疲れが影響しているのかもしれません。
心身が疲れているときは、物事を否定的に受け取りやすくなります。国立精神・神経医療研究センターの「こころの情報サイト」でも、うつ状態では物事のとらえ方が否定的になり、自分がだめな人間だと感じてしまうことがあると説明されています(出典:こころの情報サイト「うつ病」)。
気分の落ちこみや何をしても楽しめない状態、眠れない・食欲がない日、自分を責める考えが頭から離れない、仕事や家事に手がつかない、といった状態が続くときは、自己肯定感の問題だけでなく、心の不調が隠れている可能性があります。つらさが長く続くときは、心療内科や精神科への相談も考えてください。
ストレスが限界に近づいているときのサインは、精神的ストレスが限界を超えるサインとは?も参考にしてください。
気質や特性が関係している場合もある
生まれもった気質や特性が、自己肯定感の低さにつながりやすい場合もあります。
たとえば、刺激や人の気持ちを人一倍深く受け取るHSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)の気質をもつ人は、小さな失敗や人の一言を深く受け止めやすく、自分を責めがちな面があります。HSPについてはHSPとは?で解説しています。
また、忘れ物や不注意が多いなど、発達の特性によって子どものころから叱られる経験が重なり、「どうせ自分は」と感じるようになる人もいます。生活の困りごとが大きい場合は、ひとりで抱えずに相談すると、自分に合った工夫が見つかりやすくなります。いずれも、自分で決めつけずに専門家に相談することが大切です。
ここまで読んで、思い当たる原因がいくつもあった方もいるでしょう。一つひとつ確かめていく作業は、一人だと重く感じるものです。
自分の原因を見つけるための振り返り
ここまで読んでも、「自分にはどれが当てはまるのかよくわからない」という方もいるでしょう。原因は一つに絞れないことが多く、また自分では当たり前すぎて気づきにくいものです。次の問いに、思いつくままに答えを書き出してみてください。
- 自分を責める言葉が浮かぶとき、それは誰の声や口調に似ているか
- 子どものころ、どんなときに褒められ、どんなときに叱られたか
- 「自分はだめだ」と初めて強く感じたのは、いつ、どんな場面だったか
- いま、自分を一番落ちこませる場面は、仕事・家庭・人間関係・SNSのどれか
- 自分に課している「〜すべき」「〜してはいけない」は何か
- 自分を責める気持ちが強くなったのは、疲れや忙しさが続いた時期と重なっていないか
書き出した答えを眺めると、「親に言われた言葉をいまも自分に言っている」「仕事が忙しくなってから急に自分を嫌いになった」など、つながりが見えてくることがあります。答えがすぐに出なくても大丈夫です。数日かけて少しずつ書き足していくと、自分のパターンが浮かび上がってきます。
ただし、思い出すことで強いつらさや動悸、眠れなさが出てくるときは、無理に一人で掘り下げないでください。過去の傷つきが深い場合は、専門家と一緒に安全なペースで振り返ることが大切です。
原因がわかったあとの向き合い方
原因に気づいたら、次は自分との付き合い方を少しずつ変えていきましょう。原因ごとに、取り組みやすいことを紹介します。
家庭環境が原因なら「自分を育て直す」
子どものころに受け取れなかった言葉を、いまの自分がかけてあげるイメージです。「よく頑張ったね」「失敗しても大丈夫」と、心の中で自分に声をかけてみましょう。親に言われた否定的な言葉が浮かんだら、「それは親の言葉で、いまの自分の評価ではない」と区別する練習も役立ちます。
傷ついた経験が原因なら「安心できる場所」を増やす
過去の経験からくる警戒心は、「ここでは否定されない」という経験を重ねることで少しずつゆるみます。自分を否定しない友人や、趣味の仲間など、安心して過ごせる人や場所との時間を大切にしてください。
考え方のくせが原因なら「書き出して見直す」
自分を責める考えが浮かんだら、その出来事と、浮かんだ考え、そのときの気分を書き出してみましょう。そのうえで「友人が同じ状況なら、何と声をかけるか」を考えると、別の受け取り方が見つかりやすくなります。
環境が原因なら「距離をとる」
SNSを見て落ちこむなら、見る時間を決めたり、比べてしまうアカウントの表示を減らしたりしましょう。職場の評価で苦しいなら、仕事の外に自分を認められる場をつくることも助けになります。
ストレスが原因なら「まず休む」
疲れているときに自分を変えようとしても、うまくいきません。睡眠や食事を整え、心と体を休めることが先です。休んでも回復しないときは、ひとりで抱えこまずに相談しましょう。
日々の中で自己肯定感を高める具体的な方法は、自己否定をいますぐやめるには?や自分が嫌い・自己肯定感が低い…。その原因と克服方法も参考にしてください。
原因を一人で整理できないときの相談先
自己肯定感が低い原因は、自分では見えにくいものです。思い出すとつらい経験が関わっていることもあり、一人で向き合うのが苦しいときは、専門家の力を借りてください。
心身の不調が続くときも、ひとりで抱えこまないでください。原因がはっきりしないままでも、話しながら少しずつ整理していくことができます。
カウンセリングで原因をひも解く
カウンセリングは病気を治療する場ではなく、話しながら気持ちを整理し、自分を責めてしまう考え方の背景に一緒に気づいていく場です。「なぜこう感じるのか」を言葉にしていくうちに、自分でも気づかなかった原因が見えてくることがあります。「どうせ自分なんて」と考えてしまうくせや、親や周りの人に言われた言葉が今も頭に残っていることなども、そのまま話して大丈夫です。否定されずに話を聞いてもらう経験そのものが、自分を少しずつ認める手がかりになることもあります。
オンラインカウンセリング「Kimochi」では、心理職で唯一の国家資格である公認心理師のカウンセラーに、ビデオ・チャット・ペアの3つのスタイルで相談できます。顔出し不要・匿名で利用でき、登録から最短3時間で相談を始められます。スマホから自宅で、土日祝や平日の夜にも相談できます。相性が合わないと感じたときは、何度でもカウンセラーを変更できます。
料金は月額制で、月1回30分の「ととのいプラン」なら初月3,278円(税込)から始められます。プランやチャットから、自分に合う相談の仕方を選べます。
※初月30%OFFは、初めてご利用の方が対象です。ととのいプラン(月1回30分)の最低登録期間は4ヶ月です。
身近に話せる人がいないと感じている方は、悩みを相談できる相手がいないときの対処法も読んでみてください。
死にたいほどつらいときは #いのちSOS(0120-061-338)、家庭での暴力で身の危険を感じるときは DV相談+(0120-279-889)や110番へ連絡してください。
過去の出来事は変えられなくても、その出来事の受け止め方は変えていけます。話すことは、その最初の一歩になります。
よくある質問
自己肯定感が低い原因について、よくある疑問にお答えします。
Q. 自己肯定感が低いのは親のせいですか?
子どものころの家庭環境は大きな要因の一つですが、それだけで決まるわけではありません。学校や職場での経験、考え方のくせ、ストレスなども関わります。原因を知るのは誰かを責めるためではなく、自分を責める気持ちをゆるめるためだと考えてみてください。
Q. 自己肯定感が低いのは生まれつきですか?
生まれつき決まっているものではないと考えられています。感じやすさなどの気質が影響することはありますが、自己肯定感は環境や経験の中で育ち、大人になってからも変化していく感覚です。
Q. 大切に育てられたのに自己肯定感が低いのはなぜ?
愛情を受けて育っても、期待が大きすぎた、先回りして何でも決めてもらっていた、といった関わり方が影響することがあります。また、学校や社会に出てからの経験で低くなることもあります。家庭だけに原因を探さなくて大丈夫です。
Q. 原因がわからないときはどうすればいい?
最近の出来事、子どものころの記憶、よく浮かぶ考えなどを書き出してみると、手がかりが見つかることがあります。一人で整理するのが難しいときは、カウンセリングなどで話しながら一緒に探す方法もあります。
Q. 大人になってから自己肯定感が低くなることはある?
あります。職場での評価や人間関係、パートナーとの関係、強いストレスなどがきっかけで、大人になってから自己肯定感が下がることもあります。
Q. 自己肯定感が低いのは病気ですか?
自己肯定感が低いこと自体は病気ではありません。ただし、気分の落ちこみや不眠が続く、自分を責める考えが止まらないといった状態があるときは、心の不調が隠れている可能性もあるため、ひとりで抱えこまずに相談してください。
まとめ
自己肯定感が低くなる原因と、その向き合い方を解説しました。要点を振り返ります。
- 自己肯定感の低さは、性格の弱さではなく、いくつかの原因が重なって形づくられる
- 子どものころの家庭環境(否定・条件つきの承認・比較・過干渉・家庭の不和など)は大きな要因の一つ
- いじめや人前での失敗、大切な人からの否定といった傷ついた経験も影響する
- 完璧主義、白か黒か、自分のせいにするといった考え方のくせが、低い自己評価を支えていることがある
- SNSでの比較、謙遜の文化、職場の評価など、社会や環境の影響もある
- 急に自己肯定感が下がったときは、ストレスや心の不調が隠れていることもあるので、続く場合はひとりで抱えこまず相談を
- 原因に合わせて、自分を育て直す、安心できる場を増やす、書き出す、距離をとる、休むといった向き合い方ができる
原因を知ることは、「自分がだめだから」という思いこみから自由になるための手がかりです。あなたが自分を好きになれないのには、ちゃんと理由がありました。
その理由を一緒に見つめてくれる人がいると、心はぐっと軽くなります。ひとりで抱えこまず、話せる場所を頼ってください。
※Kimochiはオンラインカウンセリングサービスであり、医療行為・診断・診療は行いません。通院中の方は、主治医の許可を得たうえでご利用ください。
.png)



